神様のカルテが教えてくれること

特に理由もなく、本棚の「神様のカルテ」を手に取って読み始めました。


2年ぶりに手にした本に引き込まれ、暖房器具のない薄暗い踊り場のソファーに座り込んで読みふけりました。


作者の夏川草介さんは現役の医師です。2009年にデビューしていますが、私が夏川さんを知ったのはデビュー10年後の2019年です。


書店に平積みにされた「神様のカルテ」はよく見かけましたが、手に取ることはありませんでした。


中高生向けの読書案内といったかんじのオムニバス形式本である、岩波ジュニア新書の「答えは本の中に隠れている」の最終章が夏川さんでした。


夏川さんは読書に対して大変厳しいことを言っていました。


世の中には、好きなものを読めばいいという風潮があるが、自分が簡単に理解できる本をどれだけ多く読んだところで力はつかない、ハイキングコースのような山をどれだけ登っても険しい山に登れるようにならないように、読書も、やさしい本ばかり読んでいては難しい本を読めるようにはならない。自分に負荷をかけ、苦しんで習得しなければ物事の本質を理解することはできない。このようなことが書かれていました。


夏川さんの作品「神様のカルテ」は本としては決して難解ではありません。映画化、ドラマ化されている人気作品です。


夏目漱石に傾倒(敬愛だったかな)している変人栗原医師の目線で描かれた医療界の姿ですが、医療従事者と患者、そういった人たちを取り巻く様々な人たちがとても暖かいフィルターを通して描かれています。
栗原医師の独白から、国民皆保険のひずみも見えてきます。


古風な言い回しでほのぼのとしてはいますが、医師という仕事が激務であり、心身ともにかなりタフでなければその職には就けないということだけはわかります。

働きかた改革で残業時間に上限ができても、当分の間医師は除外されています。

当直という不可解な制度によって、栗原医師の言い草を借りれば、長い1日が終わり、それよりも長い夜が始まるのです。(医師の時間外労働についてはようやく例外としてめどがたちつつあります)

本の気になる箇所にはところどころ線が引いてありますが、読み返してみると、新たに線を引きたくなる箇所、どうしてここに線が引いてないのか?と思うところが多々あります。面白いのでささっと読めますが、ミステリーの伏線のような味わいのある本です。


原作を読んだことがない方はぜひ読んでみてください。一度読んだことのある方はもう一度手に取ってみてください。


コロナ感染に対応した経験から書かれた「臨床の砦」も読んでみてください。




社労士myoumyoう

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